クリスマスイブの舞台で、70 歳になる名優はこんな舞台挨拶をした。
「このミュージカルに登場する3人の精霊のように、3人の大切な人物に感謝したい。
一人は、この日生劇場を創ってくれた日本生命の社長に。
二人目は、私を俳優として育ててくれた浅利慶太氏に。
三人目は、私を未来に導いてくれた蜷川幸雄氏に」
そして、一緒に舞台を創り上げてくれた仲間や観客に十分な感謝を表し、若手の活躍を期待した。
けれど、
「この役は、誰にも渡さない」
という言葉が、清々しく印象に残った。
恩人や仲間や、見に来てくれる観客へ十分な感謝をしながらも、70歳になるこの名優は、「この役は、誰にも渡さない」と言い切る。それは、俳優市村正親が、現役で活躍し続けているという明確な意思表示だと思う。
物分りの良いふりをして、現役で演じ続けるしんどさを、この老優は誤魔化してはいない。ちょっと我が身に置き換えて考えさせられた。
市村正親という俳優の矜持を、クリスマスイブのミュージカルの舞台に観た。