和顔施

4月末の日に、義母が脳梗塞で倒れ、救急病院を経て、リハビリのための病院で過ごしています。さすがに91歳にもなると、元気に回復するということも難しく、家に帰りたがる毎日を過ごしています。

家族に囲まれて面倒を見てもらうことが好きなので、昔ながらの嫁の勤めを果たしていないと叱られる毎日です。

先日、孫たちが見舞いに来た折りには、急にシャンとした立派なお婆ちゃんになって、孫たちに訓辞を述べ、握手をして別れました。舞い上がった高揚感のなかで、丁度回診にやって来た若い医師達とも握手をしていました。

私がすかさず、「お婆ちゃん、ズルい❗イケメンのお医者さんと握手なんかしてるー‼」

と言ったところ、テヘッというように、ちっちゃな女の子が悪戯を見つけられてしまったような笑顔を見せました。

こんな笑顔をいつも見せていてくれたら、私達はどんなにか幸せだったろう。

仏教の言葉に「和顔施」という言葉がある。笑顔を見せるということが、人に対する施しになると言ったところでしょうか。立派になろうとするよりも、ただニコニコと笑っていてくれるだけで、私達にとっては良いお婆ちゃんであったような気がします。

さて、私がもっと年老いて寝たきりになったとき、果たしてどんなお婆ちゃんになっているのでしょうか。何も出来なくなっても、和顔施という言葉を覚えていたいと思います。